小林茂「チームマネジメント」より

ソニー厚木工場長を務められた小林茂著「チームマネジメント」より
印刷出版が専門だった小林さんが専門外のソニーの工場長になった時、
不安だと井深大さん(創業者:当時は社長)に話したら、
「工場をつぶしてもよいから、思うとおりにやれ」と言われた。

人をいかして楽しく仕事させることに長けていた井深さん。
その後、厚木工場は大変革を起こすわけであるが、その話は後日として
小林さんが仕事とは別に主宰していた「あしのこ学校」での逸話が面白い。

全国からの児童120名ほど集め、10名づつくらいのグループ(ホーム)でテント生活する。
開校式を終えて各ホームに別れる時、誰かの靴を履き間違える事件がよく起きる。
小さな子供は自分一人でその課題に対処できないから、泣き出すだけの場合が多い。

その子が属するリーダーが慈愛心から、自分一人でその子の為に靴を探して回るのは
マネージャーとして最低の行動である。
時間がかかるし、ホーム内部をおもしろくない気分にすることが多い。
見つかれば泣き止むが感謝の意を表することはほとんどない。

別のケースでは、焦ったリーダーがいろいろ細かく指図してホームの子供達に探させることもあるが、
子どもは他人の靴などを探すことには熱意を示さず、よく探しもせずに「ありません」と答えたりする。
リーダーはこういう子供達を「今どきの子どもは横着で、情けない奴だ。」と思う。
これは非チームマネジメントの典型である。

ある年、同じように靴の紛失事件に遭遇したリーダーがチームマネジメントを試してみようと、
チーム全員を集めてミーティングを開いた。
まず、間違えられた子供に質問しながら靴の細かい特徴、とりかえられた時と場所を詳しく説明させた。
そして残された靴の実物を見せる。
次にリーダーは、どうしたら良いかを全員に質問した。
すると子供達は、いろいろなアイディアを発言して、話し合いを続けるうちに、
間違えた子がいそうなホームを手分けして、しらみつぶしに訪問するのが良いとの計画を立てた。
リーダーの「では出発!」の号令で散ってゆき、たちまちのうちに靴は見つかった。

見つかった時、子供たちは達成感に満ちて大喜びし、間違えられた子も、みんなの努力に対して
心からの「ありがとう」といった。
はじめて出会ったばかりなので、どのホームもバラバラの状態であるが、このホームはこの1件の為に、最初からみんなの心が1つになってしまった。

この効果はそれだけにとどまらず、リーダーミーティングでその体験が語られたことで、
そのやり方が他のチームにも拡がっていったそうである。

子どもの力を信じることの大切さとリーダーの関わり方の重要性を感じた。
このエピソードから学べることは他にも多くあると思う。

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